エリートなあなた
体力を使ったこともあって小腹が空いたという彼。目覚めにお味噌汁が飲みたい、と言うので昨夜の残りをあたためた。
寝起きの悪い私も一緒に飲むため2つお椀へそれをつぎ、ダイニングテーブルへ持って行く。
向かい合って席に着く。熱々のお味噌汁を口につけると、次第に目が冴えるからゲンキンなものだ。
「真帆…、聞きたいんだけど?」
「何です、なに?」
起きぬけだからか敬語がうっかり出てしまう。気づいて訂正すると、正面からの視線が痛かったけれども…。
「この味噌って、もしかして八丁味噌?」
「あ、そうなの。
父が愛知出身で家で八丁味噌使っているんです。…やっぱり苦手だった、とか?」
お咎めなくホッとしたところで、今度は真剣に尋ねてくる彼に冷や汗たらり…。
八丁味噌は豆味噌の一種とされており、一般的な米麹ではなく大豆から作られている。
東海地方の限られた地域では、赤味噌と言えば八丁味噌が定番なのだとか。
ちなみに私は帰国後ずっと東京暮らしだけれど、家庭ではこの味に慣れ親しんでいるから、味覚はきっと東海地方の人に近いと思っている。
――母に昨日お願いした品もこの赤味噌。わざわざ家から持参するほど大好きだもの。