エリートなあなた
好みも聞かないでしてしまった――不安な面持ちで修平さんの表情を窺っていると、途端に破顔させた。
「…やっぱり、苦手?」
「ちがうちがう、…そうじゃないよ。ごめん、誤解させたみたいで。
――ただ、偶然って意外な所に転がってるなーってね」
ダークグレイの眼差しで遠くを見たあと、もう一口飲んでからまた笑顔を返してくれる。
「偶然?それってどういう意味?」
苦手じゃないことにひとまず安堵したものの、その言葉が今度は気になってしまう。
「ああ、俺の出身、名古屋だから」
「ええええ、そうなの!?」
思いもよらない事実に声を上げた挙句、席を立って身を乗り出した始末である。
「そんなに驚くこと?」と、当の本人は分からないといった様子で首を傾げた。
「だって名古屋の雰囲気がないし!?」
「アハハ!名古屋の雰囲気って…、むしろ真帆のイメージが気になるよ!」
よほどオカシかったのだろう、腹を抱えて笑い始めた彼に頬を膨らませてしまう。
あまりに洗練されている人だから、勝手に都心で育ったイメージを抱いていたのだ。