エリートなあなた
かくいう名古屋も大好きな都市で、お洒落な女性が多くて美味しい食べ物もたくさんの街――結局のところ、私の中で勝手な偶像が出来ていたなと反省する。
「うーん…、まあ俺は大学からずっとコッチで、そのまま就職も決めただろう?
…忙しくて帰省する暇もなかったし、今の実家の状態すら分からないからね。
今はコッチの生活が当たり前だし…、いつの間にか染まったんじゃないかと――ほら、10年ひと昔って言うじゃん?」
懐古した表情を浮かべながら話す彼に、うんうんと何度も頷いてしまうのも当然だ。
「そっかぁ…私、本当に味噌が合わなかったんだって心配したんだよ?
でも、共通点が見つかって嬉しい!――よく考えると知らないコトだらけだしねぇ」
「ごめんごめん、…昨日は何となく聞きそびれたんだよ」
「ううん、むしろ嬉しかったから」
八丁味噌がもたらした共通点は、彼の過去をちょっぴり伺えた特典付きだね。
知っているコトは指折りの程度うえ、秘密の関係が先立っていたから。
今さらだけれど不思議なバランスで成り立っているな、と気づいて見合いながら笑ってしまった。