エリートなあなた
いつもの空気は吹き飛んでいて、今は仕事なんて忘却の彼方。
だけれど仕事の毎日があるからこそ、この時を特別だと楽しめるもの。
ご褒美があればまた次も頑張れる。…これもまた、オトナの特権だと思うよね?
帰りはそのまま送ってくれると言うので、お泊りグッズもすべて車のトランクへ積んで貰う。
冬の朝は冷たくて真っ暗な空が覆っている。その中を彼がハンドルを握って出発した。
ちなみに愛車は国産メーカーのフォルムが美しいスポーツカーである。
特有の軽快なエンジン音。内装はやはり彼らしいシンプルさが際立っていた。
彼のフレグランスの香りが漂う車内は、それだけで居心地良さ抜群だけれど…。
「ねぇ、修平さん?」
「ん~?」
運転する彼の横顔に呼びかけてみると、流れていたBGMに合わせて陽気な声が返って来る。
「それで今日はどこへ行くの?もう教えてくれも良いでしょ?」
都内からすぐ高速に入ってしまい、途中休憩を挟みながら随分と走っている現在。真っ暗だった空には太陽がゆっくり昇りはじめた。