エリートなあなた
幸せなひとトキ


「まぁ、着いてからのお楽しみ!」


この答えを一体、何度聞いたのだろう?――ハンドルを握りながらのイジワルな声が返って来ていた。



方向音痴な私はとりあえずサービスエリアの地名を見ながら、東名を順調に走行中だとしかいえない。



だけれど押し問答を時間がまた楽しくて、長時間の車内でも飽きないから不思議なもの。



元々お喋りタイプの2人じゃないから、BGMが流れるだけの静寂に包まれる方が長い。



それでも苦痛じゃないのは、やっぱり修平さんの横顔を見ていたいからね――



「…視線が痛いんだけど、」


「――何で気づいたの?」


ずっと正面を注視して走行しているのに、呆れたような声色で呟いたのは彼。



まるで全方位にアンテナでも張っているの?と、疑問符が浮かんだのは私だ。



「んー、熱烈な視線だからでしょ?」


「…イジワル、」


ついて出るのは、この言葉。オトナな彼にはどうせ敵わないもの。



「最高の褒め言葉だけど?」


ほら、口元を緩めて笑ったその横顔。それだけで鼓動がまた早まっていくから…。



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