エリートなあなた
新たなる日々


さすがにメイク直しでは、真っ赤な目と腫れを誤魔化せはしなかった。


“あとは時間頼みだ”と溜め息を吐き、使用したポーチを元の位置へと戻す。


早く戻らなければ――その焦りから、ものの3分で用を終える。そして化粧室のドアを開けると、ある人物に出くわした。



「――大丈夫?」

「…え?」

まさかドアの向こうに人がいたとは露とも思わず、ドアを半分開けた状態で固まってしまう。


それが先ほどまで、“ひと悶着”のあった課長とあれば当然のことだろう。


幾分、重さを感じる瞼をパチパチと瞬かせる私に、壁に凭れていた課長は微笑する。


組んでいた腕を外して姿勢を正すと、ダークグレイの眼差しがこちらをジッと見据えた。



「あ、の、先ほどはご迷惑をお掛けしてすみません」


――課長は何も悪くない。だから謝るのが先決と、本日2度目は謝罪という形で頭を下げる。


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