エリートなあなた
「へぇ、そっかぁ、また言うつもりなんだぁー。
それなら俺は黒岩さんに餞別で、“剛史くん”情報を色々と吹聴しておこうかなぁ」
「はあ!?」
背中へかけられた予想外の爆弾発言に、狼狽しながら向き直ってしまった。
「あれぇ?言われると何かマズイことがあるの?真帆ちゃんは」
「…後輩苛め!」
どこまでも不敵な笑みと言葉の往来。苦し紛れに出るのは、ワン・フレーズである。
「まだ言うのかぁ、やっぱり、」
「ちょ、課長…!持ち場から離れないで下さいよー!」
口を尖らせた彼がおもむろに修平さんの方へ歩いて行こうとしたので、今日も白衣姿の背中を引っ張って阻止する。
「…真帆ちゃん、それヤダ!」
「…は?」
呆気に取られて掴んでいた白衣から手を離すと、くるりと振り返った松岡さん。
「俺は“松岡オンリー”で生きてんのー」と、かつても似たようなことがあった気がする。
ちなみに今まで構造課の課長を務めていた修平さんの後任として、テキトーな松岡さんが課長に決定している。
――構造課のメンバー誰もが、スマイルキラーに戦々恐々としているみたいだけれど…。