エリートなあなた
修平さんが日本を発つのと同じくして、私の生活もまた新たな日々へと変わって進んでいく。
出会いもあれば、別れだって人生に限りなく遭遇するから――
だけれど、別れは辛いだけじゃない。いつかどこかで交わる時が訪れると信じているから、人はまた笑顔で歩いて行けるのだろう。
「今日も見事に、松岡にやられてたな?」
リビングテーブルを料理で埋め尽くさんばかりの中、思い出しているのか喉を鳴らして笑う彼を見つめた。
「え…、あんなに囲まれてて気づいたの?」
「話までは聞こえなかったけど、2人の表情を見てれば気づくよ」
彼が口をつけたのは、絵美さんからの頂き物という日本酒の大吟醸。その透明で小さなグラスを傾けると修平さんは、きょとんとしている私をまた一笑した。
「愛情の裏返しだって」
「あれは私でストレス発散してるの!
都合よく妹っていうから、…何も言えなくなるもん」
はぁと重い溜め息を吐き出すと、海老の天ぷらを箸で口へと運びもぐもぐ咀嚼する。
「ちなみに、松岡ってホントに絵美さんの下僕だと思う?」
「…違うの?」
「正解は松岡から引き出すといいよ」と、目を白黒させる私にイタズラの子ような顔つきに変わる。