エリートなあなた
それから15分も経たずに私の身体は、ソファの上へ場所を移して寝転んでいた。――ただの食べすぎで。
「修平さんも無理しないでね?機中で体調が悪くなると大変だから」
ダイニングテーブルへ突っ伏す前へ避難して横たわっているものの、さすがの食いしん坊でも“勿体ない”精神を打ち砕く量を作ったのだと後悔する。
「そうさせて貰う。残りは明日の朝、また食べさせて貰うから。
ありがとう――とても美味しかったよ」
柔らかい笑みを見せる彼が、休めることのなかった箸をついに置いた。
「いいえ、お粗末さまでした。大量に作って本当にゴメンね?」
それでも残った分は保存容器に入れて瑞穂のお家へ届けよう、と心に決めた。
「そんなことないよ。頑張ってくれて嬉しかった」
優しい彼はまたフォローを入れてくれる。私が言わなければきっと、無理して完食した筈だったから。
彼のマンションで2人一緒にいると、不思議なほど時間の経過が早くて仕方ない。
今日が最後――やはりそれが、頭の片隅で寂しさを募らせているからだろう。
それまで引継ぎや友人や部署主催の送迎会が入って、なおさら彼とは共に過ごせなかったけれど。
ラストの今日は、私の為だけに完全フリーにしてくれた。その優しさだけで、泣きたいほど嬉しかった。