エリートなあなた


それから15分も経たずに私の身体は、ソファの上へ場所を移して寝転んでいた。――ただの食べすぎで。



「修平さんも無理しないでね?機中で体調が悪くなると大変だから」


ダイニングテーブルへ突っ伏す前へ避難して横たわっているものの、さすがの食いしん坊でも“勿体ない”精神を打ち砕く量を作ったのだと後悔する。



「そうさせて貰う。残りは明日の朝、また食べさせて貰うから。

ありがとう――とても美味しかったよ」


柔らかい笑みを見せる彼が、休めることのなかった箸をついに置いた。


「いいえ、お粗末さまでした。大量に作って本当にゴメンね?」


それでも残った分は保存容器に入れて瑞穂のお家へ届けよう、と心に決めた。


「そんなことないよ。頑張ってくれて嬉しかった」


優しい彼はまたフォローを入れてくれる。私が言わなければきっと、無理して完食した筈だったから。



彼のマンションで2人一緒にいると、不思議なほど時間の経過が早くて仕方ない。



今日が最後――やはりそれが、頭の片隅で寂しさを募らせているからだろう。



それまで引継ぎや友人や部署主催の送迎会が入って、なおさら彼とは共に過ごせなかったけれど。



ラストの今日は、私の為だけに完全フリーにしてくれた。その優しさだけで、泣きたいほど嬉しかった。



< 345 / 367 >

この作品をシェア

pagetop