エリートなあなた
起きたあとテーブルの片づけを急いで終えると、2人でほうじ茶を飲んで時間を惜しむように話をした。
大好きなダークグレイの眼差しを正面から見ることも、安らぎを与えてくれた声を直接聞けるのも最後。
――だから泣かない、彼の笑顔だけを心に留めておきたいと決めていた。
「明日、お昼に発つんだよねぇ。…平日で残念」
「ハハ!2人とも真面目に働けって神のおぼし召しかもな」
「…うん、それに私ひとり休んで勘ぐられると大変だしね。バレないようにしなきゃ」
「あ、ひとり知っちゃった」と、思い出したように口にする彼に目を見開いた。
「ど、どういうことっ!?」
「…同じ部署の矢崎さん」
「えええええ!」
静寂に包まれていたリビングを切り裂く声音も仕方ない――なぜ彼を狙ってる女性に教えたのよ!?