エリートなあなた
だからこそ今も正直に話してくれたのだと思う。すると湯呑をテーブルへ置いた彼の目の色が変わった。
「――向こうへ行ったあとは、…帰国出来るまで途中で戻らないつもりだ。…なかなか連絡も取れないとも思う。
だから、お互いに日々に励んで行こう?それでも、絶対に無理だけはするなよ…?
突き進むだけが人生じゃない…、たまには休む時間も人間には必要だから。
もちろん迷った時は、一度立ち止まることも大切!そんな時は躊躇わずに周りを頼って欲しい。
真帆は負けず嫌いでやり遂げるまで頑張りぬくから、現に心配してるヤツが俺以外に1人いたりするし?
――それだけアドバイスさせて貰ったけど、真帆はもう大丈夫だから…」
ダークグレイの眼差しはどこまでも澄んでいて、最後まで優しい人となりに救われた。
「うん、ありがとう。修平さんこそ無理はしないで、…どうか仕事に専念して下さい。
――私は大丈夫だから、…アドバイス忘れない」
「…ありがとう」
目を細めて笑うその表情を前に、チクチクと小さな痛みも感じていた。
だけれど、これはお別れじゃない。2人が2人らしくあるための、ほんの少しの別離だと信じてる。
最後まで涙を見せなかったことも、頑張ってと口にしなかったことも。
…すでに別の道を進み始めた私たちには不要だったから。