エリートなあなた
残像に思いを寄せて
新しい発見も日々の後悔も、全部忘れることのないように日々を大切に過ごしたい。
ありふれた日常の中にも何かきっかけはあるから、常に視野を広く持っていたいと思う。
そして、…何も誇れるものがなかった私に、愛を教えてくれた大切な人とまた笑い合える日を目指そう…。
「吉川さん大変ですー!」
「ど、どうしたの?岩田くん」
特有の喧騒に包まれた穏やかな午前のフロアに、突如けたたましく響いた悲壮感たっぷりの声。
呼ばれてしまった私もさすがにドギマギして振り返ると、新人の岩田くんがこちらへ駆けて来るところだった。
「そ、それが…、ウチが依頼してて今日届くはずだったガラス材料なんですけど…。
いま輸送会社からTEL入って、事故で破損してしまったそうなんですよ…!」
「そうなの!?」
私のデスク前で立ち止まった彼の顔色は、可哀想なほど真っ青だ。
「はい…、どうすればいいでしょうか…?」
新人くんが頭を抱えてパニックを起こしているのも無理はない。
彼が指しているのは発注元から何度もデザイン差し替えに見舞われて、試作開始が本日からのサンプル品。
前段階での遅れが響き、かなりスケジュールもギリギリで組んであった。