エリートなあなた
届くはずだったガラス材料品がなければまた遅延――つまり、会社の信用問題に関わる。
「うん、仕方ないよ。予期せぬトラブルだもん」
椅子から立ち上がった私はまず、デスク脇で項垂れている彼の肩を優しく叩いた。
――けれど、正直言って悠長に構えていられる問題でないのは事実だ。
「あー、…だめだ」と、ますます俯いてしまった岩田くん。
こういった時こそ深呼吸。努めて冷静に腕時計へと目を配ると、該当材料を保持する業者リストをPCから抽出していく。
するとヒットしたのは以前チェックしていた通り、たったの2件という希少材料なのである。
今回輸送事故に見舞われた会社は九州にあるため、再輸送を待つとどうしても1日のロスが発生する。そして残りの一社の立地ならば、…行ける。
「ねえ、岩田くんいい?
九州の材料も今後必要だから、担当者には再輸送をもう一度お願いしてくれる?
それとすぐに出かけられる準備をしておいて?至急よ!」
「は、はいっ!」その言葉を残して席へ戻った彼は、すぐに受話器を片手に連絡を始めた。