エリートなあなた
それを一瞥しながら携帯電話を手にした私は、リストからある名前を検索してボタンを押す。
「――あ、A材料社の佐藤さまの携帯でよろしいですか?
SJ社の吉川です、お世話になります。はい、大変お久しぶりですね。…ええ、実はですね、今日は急なお願いが…」
電話を手短に終えたところで岩田くんがスタンバイしていたので、そのまま2人で試作部をあとにする。
「どこ行くんですか?」と、慌てている割に呑気な岩田くんには苦笑だ。
「これから会社を出れば…そうね、2時間半以内にA材料社には直接伺えるでしょ?
製品も小さな段ボール箱に入る大きさだし、往復してもその方が再輸送を待つより早い――たまには自分の足を使えってこと!」
電車を乗り継いで東京駅へ到着すると、新幹線へ飛び乗って目的地となる名古屋へ向かった――
* * *
名古屋へ到着してタクシーで目的のA材料社へ向かえば、佐藤さんが厳重に梱包したガラス材料品とともに待っていて下さった。
お陰でそれを手早く受け取ることが叶い、今回は事情からまた伺うと約束して手短にその会社をあとにさせて頂いた。
そして今は素早くタクシーへ乗り込み、2人で名古屋駅へと向かっている。
東京都はまた違う風景と名古屋という地名が、2年前の日々をまるで昨日のように蘇らせた。