エリートなあなた


小さく自嘲してバッグから手帳を取り出すと、引っかけていたボールペンを握ってみる。



群青色の落ち着いたデザインに、手にしっくりと馴染む絶妙な細さと重さは今も変わらない。



「あ!気になってたんですけど、吉川さんいつもそのボールペン使ってますよね。

お洒落で高そうだなっていつも思ってたんですよ」


ここでも声を上げた岩田くんが興味熱心に、私の手に収まっているペンを覗き込んでいる。



「本当?んー、使い始めて2年になるのよ。すごく書き易いし、愛着があって他は使えないから…」


懐かしむように目を細めて見ても、未だ朽ちることのない高級品は輝いている。


2年の歳月が流れているとは感じさせない、職人さんお手製の逸品だ。



「へぇ、そうなんですか!いつまでも使えるヤツって格好いいですねー。

俺の文具類って、ほとんど記念品ですよ?」


自虐ネタを披露している間に、大切なボールペンは手帳とともにまたカバンへ沈めておいた。



このボールペンは修平さんとのお揃いの品――私が最後に過ごした日にお揃いにして贈ったものだ。



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