エリートなあなた


え…、いまの声って…?――空耳など考えるより早く、跳ねかえったように顔を上げていた。



そこには椅子に腰かけテーブル上で肩肘をついて、ひらひら手を振っている松岡さん。



そしてもう1人の姿に視線はもう逸らすことが出来ず、唇がふるふると震えていた。



「う…う、そ」


驚きのあまり瞼は瞬きを忘れたように一点を捉え、信じられないと数回頭を振っていた。



「――驚いた?」


「ど、…して?」


二言目を発した声音も変わっていなくて、呆然とする私に優しく微笑んでくれた。



あまりの衝撃で、その場に立ち尽くしたままジッと見てしまう、ただ一点。



サラッと靡く栗色の髪とダークグレイの優しい瞳がいきなり目の前に現れても、何も言葉なんて出て来なかった。



< 358 / 367 >

この作品をシェア

pagetop