エリートなあなた
携帯をOFFにして課長のあとにつけば、初めて入室する試作部にドキドキする。
そうして所在なげに歩く私はもちろん、秘書課の制服姿。清潔感漂う白衣姿が多勢のこのフロアでは、明らかに浮いていた。
さらには試作部のエリート――黒岩課長が隣を歩いている。これが最も悪目立ちする原因かもしれない……。
この部署は日夜、自社もしくは他社との共同製品について開発研究を行っている。
たとえばプラスチック製品や繊維製品、また美容製品と、幅広い事業に携わっているのだとか。
簡素に説明を受けただけの賑やかなこのフロアは、圧倒的に静かな秘書課の者から見て異世界だった――
課ごとに向かい合って並んでいるデスク上には、ミルフィーユのような書類の山と器具やサンプル品が積み上がっている。
その中で打合せや諸外国の電話に応じる姿は、まさにバイタリティに溢れていた。
奥にも研究施設が見えて、そこを出入りする白衣姿の女性もチラホラ見受けられる。
誰の目を見ても、会社の未来を担うと謳われる部署に相応しい姿がそこにあった。