エリートなあなた
…私もここで働きたかった――単純にその気持ちを思い起こさせる光景だ。
「…さん、吉川さん聞いてる?」
「は、はい!?」
ぼーっとしていたところへ穏やかな声がかかり、慌てて視線を戻した。
「“ここのミーティングルームに入るよ”って言ったんだけどね」
するとダークグレイの眼差しは、いささか困惑気味。課長は苦笑を浮かべながら前方のドアを開けた。
「す、すみません!」
開けたまま待ってくれる彼に、ペコペコ何度も頭を下げて中へ入った。
やって来たここは、数席ほどの小会議室。試作部では他部署と呼び名が違うようだ。
「ハハッ!」
突如聞こえた笑い声に、「な、何でしょう!?」と思わず肩が跳ねてしまう。
「吉川さんって、…見た目と違って面白いよね」
「えええっ!?」
「ハハハッ、その反応とか、」
もちろん声の主はドアを閉めた課長である。目を細めて笑う姿はレアものだ。