エリートなあなた
促されるままに、中央の席へと向かい合う形で座る。が、未だに笑っている彼。
「…本当にご迷惑ばかり、」
「いや、想像した通りで嬉しいよ」
ダークグレイの眼差しはどこまでも穏やかに、こちらの動揺をアッサリ勝ち取った。
ほんの少しでも気に留めて貰えていた――この事実が嬉しくて、ドキドキうるさく鳴り始めた鼓動。
これは不可抗力だとまたフタをする。「色々すみません…、」と当たり障りのない言葉をプラスした刹那。
「まーた謝った!」
「へっ!?」
「謝るよりも“ありがとう”がベターと思うよ?」
そんな思いを知ってか知らずか、デスクから身を乗り出して言うのは課長。
ぱちぱち目を瞬かせる私を見て、フッと笑みを零すから困りものだ。