エリートなあなた


促されるままに、中央の席へと向かい合う形で座る。が、未だに笑っている彼。



「…本当にご迷惑ばかり、」


「いや、想像した通りで嬉しいよ」


ダークグレイの眼差しはどこまでも穏やかに、こちらの動揺をアッサリ勝ち取った。



ほんの少しでも気に留めて貰えていた――この事実が嬉しくて、ドキドキうるさく鳴り始めた鼓動。



これは不可抗力だとまたフタをする。「色々すみません…、」と当たり障りのない言葉をプラスした刹那。


「まーた謝った!」


「へっ!?」


「謝るよりも“ありがとう”がベターと思うよ?」


そんな思いを知ってか知らずか、デスクから身を乗り出して言うのは課長。



ぱちぱち目を瞬かせる私を見て、フッと笑みを零すから困りものだ。



< 39 / 367 >

この作品をシェア

pagetop