エリートなあなた


おもむろに席を立った課長は、カーテン代わりのブラインドを開くと振り返った。



途端に蛍光灯の白い光がこちらへ差し込み、フロア全体の見晴らしまで良くなっていた。



「さっきの問いに正解はない――単純にどうかを聞いているだけだよ?」


「え、と…それなら、大したものじゃ」


「だから~!その自分の意見を初めから否定するのは良くないって。

口にする前から自分の意見を卑下すれば、人には伝わらないと思わない?

これだと本当に俺が苛めてるみたいじゃん!ね、チガウ?」


「あ、…かもしれません」


「フッ…、そうなの!」


窓の隅の壁へ凭れながら諭すその姿は、周囲に聞くウワサとは違ってフランクな人柄。



これこそレアな場面よね?と、思わずクスクス笑いが込み上げる。すると課長も優しい笑みを浮かべていた。




「あの…私ですね。非常に単純なんですが、試作部の方々をスゴイと思いました。

初めて拝見させて頂いて、とても多忙な部署だと噂で伺っていたのですが、皆さんが活き活きとしていて圧倒されました…。

仕事を楽しんでいる姿は正直言って、…羨ましいというか、素直に憧れました」


不思議な魅力に囚われつつ、彼の目を逸らさずに答えた。



うん、…これが偽りのない正直な感想。ひたすらに打ち込める、この環境をただ羨ましいと思ったから。



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