エリートなあなた


あ、…やだな。分かりきったことを再確認すると、また気分が沈んでいく。



それでも会う機会は少ない。滅多にお目にかかれない姿から目が離せなかった。



「あ~、ホッとした。これで進められる!」


淡々とこちらへ戻って来ると、椅子へ腰を下ろした彼の第一声がこれだ。



「す、進められるって、どういう事でしょう…?」


「吉川さんの感想のお陰」


再び対峙した顔つきは、とてもニコニコしている課長。…ますます分からないんですけれど。



あの陳腐な意見のどこに、この笑顔の引き出す何かが隠れていた?と首を捻りたい。



「ここの仕事、…興味あるんだよね?」


「…あ、ええ、はい」


「秘書課や試作部の人事異動が少ないことは知ってるよね?」


「は、い」


上擦った返事から、動揺は悟られているだろう。ひとつずつ確認される度、私はコクンと頷いていく。



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