エリートなあなた
それでも負けず嫌いな性格と就活時代の苦労を思えば、あっさり辞めることは出来ず。
半ば諦めの境地で自社ビル最上階の一階下にある、秘書課の門、…扉をノックした。
そこではブラックのジャケットとスカートに身を包んだ、華やかな女性数名がPCや電話応対などに忙しい姿を目の当たりにする。
「あーごめん!吉川さんよね?私は阪本 絵美、よろしくねー。
ここは実戦向きだから、研修とかすっ飛ばして今から仕事に就いて貰うわ!」
「は、はい。吉川真帆です、どうぞよろしくお願いいたします」
たとえ不本意でも中途半端な新人ではダメだ、と改めて身の引き締まる思いがした…。
――その気持ちが続いたのは、半年というあまりに短い粗末なもの。
まだひよっ子な新人のクセに、毎日のルーティンワークに早くも合わないと感じていたため。
役員のサポートやスケジュール編成、各種文書類の作成など。想像以上に忙しくてどれもが魅力ある業務なのに、…自分にはしっくりこない。
それは大学時代の友人の話を聞く度――研究がしたいという思いに駆られていたせいだった。
初めに抱えてしまった“不本意”さが、また感情の奥底で燻ぶりはじめていたのだ。
それでも社会人にはよくあるものだ、と思いにフタをし続けて毎日を送っていた…。