エリートなあなた
冷めかけたリゾットを食べ終えると、すぐに運ばれて来たコース最後のデザートはパンナコッタ。
真っ白でぷるぷるとしたそれをスプーンで口へと運ぶ。ひんやりとした冷たさと、優しい甘さが口いっぱいに広がって幸せな気分。
「はぁ、…最近の男って何であんなに軟弱なわけ?」
「うーん、すべてがそうじゃないけど…、」
“瑞穂からすれば、男はほぼ軟弱になると思う”と言えば、さすがに結果は見えているから閉口した。
「女がバリバリ働くなんてこのご時世、当たり前じゃない?」
「うん、それは強く同意」
「でしょっ!?」
とはいえ、その憂いを帯びた表情すら人目を惹くのは流石だ。“理工学部のクール·クイーン”という、大学時代の称号は今も健在だろう。
クイーンの名の通り女王様気質の彼女――つまり歴代の彼氏は、尽くしてひれ伏す男性ばかりでもある訳で…。
「この前はね、“仕事は何してるの?”って聞かれて答えたら、それから男が全員引いたのよ。
また同じ理由でスルーされるとかウザいっ!あー、思い出すと腹が立つ…!
あんまりムカついたから、その日は30分で女子メンバーにも黙って帰ったわよ!」
追加オーダーしたアイスティーを飲みながら、いまだ消えない前回のうっ憤をここで晴らすように言う瑞穂。
「あー…、素人だと研究者って聞くだけで引くかもしれないね」
こういう時は当たり障りのない言葉を返して苦笑する。彼女の愚痴を今度は聞きながら、少しずつパンナコッタを味わう。