エリートなあなた
天井でシャンデリアが煌めくそこは、ロココ調の華やかな雑貨が揃う小さなお店だった。
じつは昔から、2人とも雑貨店やインテリアショップが好き。所狭しと並べられた小物類に、さっそく興味津津でチェックする瑞穂にくすりと笑う。
私も白とピンクの薔薇がプリントされた、タオル地の可愛いハンカチを手に取る。…二度と会社で泣かないようにしなきゃ。
――黒岩課長に二度と私的な迷惑を掛けないこと、それが試作部で勤める前の誓いだから。
大学時代は恋愛バナシだって、楽しいことばかりだったのに今はもう遠い日の出来事に思う。
何より今さら恋愛に溺れたくない。…この状況で無理は出来ない、しようとも思わない。
それでも新しい出会いはずっと追い求めていたいし、恋愛する心も忘れたくない。
課長のことはすぐに憧れだったと諦められる。…上司に想いを抱くだけ無謀だって。
「ちょっと真帆、聞いてるー?」
「あ、ごめん!なになに?」
「だからー、ピンキーリングがすっごく可愛いって言ってたのよ!」
ハンカチを手にしたまま、ボーっとしていたらしい。小さな店の奥から咎める声に返して、ひとまずそれは元に戻しておいた。