エリートなあなた
向かった先にあったのは、小さなショーケース。その中には、小さな薔薇が見事にあしらわれた18金のピンキーリングが数点飾られていた。
店員さんにお願いして見せて貰うと、リングの繊細さにますます可愛く見えてしまう。
その中で私の目に止まったのは、薔薇とピンクトルマリン石がついた品。
店員さんの勧めで試しに填めてみれば、運の良いことにサイズがピッタリだった。
「たまには一緒に買う?」
「うん、…願かけリングにする」
そう言う瑞穂も気に入った品が見つかったためか、声色がすっかりいつもと同じに戻っている。
「願かけって、何を?」
「それを言ったら、意味なくなりそうじゃない?」
「まあねぇ、…じゃあ私も願かけしておく」
くすくす笑って会計を済ませた私たち。お気にリストへプラスした店を出る時にはもう、右手の小指に小さなリングが馴染んでいた。
「ねえ、たまには泊まりに来ない?
真帆の美味しーい料理が食べたいし」
「それは良いけど…。本当に美味しいって思ってる?」
「料理ギライには神に感じるくらいに」
「ふふっ、なにそれ!」
ぽかぽかした暖かい気候の中、たまには女友達と何も考えずに出歩く時間も必要らしい。
どこまでも勝手だけど譲れない――そんなオトナゆえのジレンマに苛まれている今は…。