エリートなあなた


同時に振り返った私が、その先で対峙した人物。


「ま、松岡係長…!」


「どーしたの?こんな隅なんかでボーっとして」


それは口元に笑みをたたえて見下ろしてくる、松岡 哲(まつおかてつ)さん。



異動する一週間前――今後の説明もかねた、試作部のミーティングに参加した時に面識のある方だ。



「え、と…緊張?です」


「なにその疑問形…!」


まじまじと顔を見られたかと思えば、今度はツボに入ったと言いたげに噴き出し笑いをされる。



奥二重の目元が涼やかな印象の彼は、試作部で今回新たに新設された課の係長を務める人物だ。



「ま、松岡係長!」


未だに笑われているのも心持ち悪い。ほんの少し、牽制の意味で彼の名を呼んだというのに。



「俺その呼ばれ方ヤだから、“係長”ヌキにしてね?」


「は、…はぁ」


口角を上げてニヤリと笑われてしまい、一本取られたとでも言うべき…?



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