エリートなあなた
すると電話中であったため引き返そうとすると、指と目で“ここで待て”の指示が入る。
ペコリと一礼したあと、デスクの隅に立って終わるのを少し待たせて頂いた。
「黒岩課長、おはようございます」
「ああ吉川さん、おはよう。じゃあ行こうか」
微笑を浮かべて立ち上がった彼こそ、構造課の課を担っていく黒岩課長である――
ライトグレーのスーツに淡いイエローのネクタイを合わせた今日の課長。
試作部での顔つきは、エリートと周囲に言わしめるクールな様相である。
彼に会釈をする部員に私もペコペコ頭を下げながら、あまりに大きなその背中を追った。
目的はフロアの一角にある部長室へ伺うこと。試作部全体を統括する伊藤部長に、改めてご挨拶するために。
ちなみに部署の方へは、前回の説明会の時に紹介を受けて簡単な挨拶は済んでいた。
だけれど――その時に知った事実が、黒岩課長も配置転換するということで。
もともとはマネジメント課の課長だったものの、今回から構造課を任されるのだそう。