エリートなあなた
さらにその場で教わった、この課の特性――それが研究開発ひとすじ…、とはいかないことだ。
クライアント回りを受け持つ役で、打合せや段取りなど他の課のヘルプ作業も業務に含まれているらしい。
様々な案件を抱えて消化していく為、頭の切り替えが早くなければ成り立たないとも。
さっき会った松岡さんをはじめ、今回の課内のメンバー編成は試作部でも有名揃いと知って驚いたものだ。
そして意外なことに、試作部の部長室はパーテンションで区切っただけの簡素なスペースだ。
なんでも部屋に閉じこもるより現場主義、の伊藤部長が部屋を撤去したとか。
そちらへ課長とお伺いすれば、マホガニー色の大きなデスクについて私たちを穏やかに見る伊藤部長に会釈した。
「吉川さん、ここでは慣習や失敗に捉われずにどんどんトライして欲しい。
――それが構造課を立ち上げた一番の目的だ。よろしく頼むよ」
この課の特徴こそが新人の私を導いた大きな理由だ、と重ねて下さった部長。