エリートなあなた
暫くしてつきあたりを曲がると、いきなりピタッと足が止まった。
同時に手首を掴んでいた力も緩まった。するとくるりとこちらへ向き直った松岡さん。
――目の前に広がっているのは、数台の自動販売機が設置されたスペースだった。
「コーヒー飲める?」
「…は?」
目を丸くする私の反応をYESと受け取ったのだろう。ニヤリと笑ってまた背を向ける。
ガコン、と音が鳴って屈んだ彼が差し出してくれたのは、缶コーヒーだった。
それを受け取ったところ、あたたかいブラック無糖。また背を向けた彼が同じ動作を繰り返す。
同じ品を手にした彼が向かったのは、脇にあるプラスチック製のベンチ。
そこへのんびり腰を下ろすと、足を組んで私を手招きしている。
「ごめんねー。昨日ちょっと寝てないからなんか眠いんだよねぇ」
「…た、大変ですね、」
「老化現象かもね」と、けらけら笑って缶のプルトップを開けた松岡さん。