エリートなあなた

すでに飲んでいる彼に倣って、隣り合った私もコーヒーの固いプルトップを開けた。



部署異動の前にジェルネイルをオフしたことも、意外なところで役立つものだ。



ちなみにコーヒーはアレンジテイストより、断然ブラックの方が好き。



手のひらまであたためてくれた缶を傾けると、ほろ苦い味が口いっぱいに広がった。



「真帆ちゃん、この仕事はいかに楽しめるかがカギだよ」


「そ、うなんですか？」


缶を片手に立ち上がって捨てたと思えば、また同じ物をゲットして帰って来る。



「だって開発製品がタダで味わえるもん。サイコーじゃない？」


「えええ、そこですか！？」


「もちろん最高のご褒美でしょ？」と言いながら、またプルトップを開けた松岡さん。



ちなみに目の前にある自販機は、大手飲料水メーカーと共同開発したそうだ。



缶コーヒーがよく売れているのは、会社に備え付けされた自動販売機。



それなら社内設置用として、コーヒーに限った機体を作るのはどうだろう？



と、担当者が呟いた一言が発端で生まれた製品なのだとか。