エリートなあなた
募る想い
気を使って下さるのはありがたいことだけれど、「すみません」と何度も言う外ない。
「なに、どうしても無理?」
「…え、と」
次第に声のトーンが下がっていく遠藤さん。向かいの席のデスクチェアに勢いよく座ってしまう。
初日から空気を悪くするのは嫌でも、金曜の一件があって公共の場へ行くのは怖い。
その事情を知らないらしい遠藤さんからすれば、腹立たしく思っても仕方ないことだ。
「遠藤ー、真帆ちゃん怖がってるし」
「いや、…そんなつもりじゃ」
狼狽する私に助け船を出してくれたのは、隣の席で頬杖をついている松岡さん。
遠藤さんにとっても上司な彼の苦言は堪えたのか、今度は彼の方が困惑気味だ。
「それに真帆ちゃんには、手ぇ出さないでね」
そこで松岡さんからあっさりと放たれた言葉。もちろん目を白黒させて隣を見ると。
「えっ、…まさか、」
「どうなんだろうね?」
私と松岡さんを交互に見てくる遠藤さん。明らかに勘違いをしているようだ。
「真帆ちゃんランチ行こー」と、松岡さんに手を引かれるなんて――これって、何かのデジャヴ?