【短編】婚約破棄された悪役令嬢ですがリスクを回避できて幸せです

ハッピーエンド

「……シェリル? おまえなんでここに!」
「まさかライナスに嫌がらせするため? ホントに最低な女ね、あんたって!」
 立ち上がったライナスとカリナはシェリルをいっきに責め立てる。
 自分たちが失敗したくせに、全部私のせいにしようとしている二人にはもう呆れるしかなかった。

「ライナス殿下、国の代表として会談に臨まれ、ご自身でサインした内容には責任を持つべきです」
「うるさい! おまえはいつも俺に説教ばかり。だから捨てられるんだよ」
 カリナの方が俺のことを思っていてイイ女だとライナスはカリナの肩を抱き寄せる。
 
「個人的な問題は関係ありません。撤回は認められなかったと国王陛下にご報告ください」
 そして廃嫡されてください。
 とまでは言わないけれど。
 だが、今回のこの失敗は国王陛下でも庇いきれない。
 おそらくライナスは廃嫡となるだろう。
 
「おまえな! 少しはカリナみたいに可愛らしくできないのかよ」
「その可愛らしいお相手は、先ほどからずっとディートリヒ殿下の方を見つめているけれど?」
「……は?」
 肩を抱いているカリナの視線はシェリルが言った通りクトウ国の王太子に。
「カリナ!」
「しかたないじゃない! カッコよすぎるのよ。背も高いし、顔も彫刻みたいだわ。あんなに色気を出されたら見るに決まってるじゃない!」
 欲望に忠実すぎるカリナの発言を聞いた大臣たちがシェリルの隣で笑いをこらえている。

「この二人を捕えろ! 詐称罪で訴える」
「私は関係ないわ、ついてきただけだもの!」
「さ、詐称罪!? シ、シェリル! なんとかしてくれ! 婚約者だろ!」
 ライナスのリスクは『89』、ディートリヒは『18』。
 ライナスを助けるなんて嫌だ。
 こんな男に救いの手を差し伸べる気なんてさらさらない。
「婚約破棄しております」
「そ、そうか。ショックだったんだな! 大丈夫だ、もう一度婚約できるように父上に……」
「リスクの高い男とは婚約をお断りします」
 騎士たちは抵抗するライナスとカリナをあっさりと拘束する。

「彼らにはしかるべき措置を取るが、この国にシェリルを残していくのは心配だな」
 ディートリヒはシェリルの右手をそっと握ると、その場に跪いた。
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