早河シリーズ第三幕【堕天使】
手にしてはいけないと禁じられるほど人はそれが欲しくなる
一度手にしてしまえばもう戻れない
どこまでも堕ちていく
どこまでも朽ちていく
どこまでも求めていく
どこまでも果てていく
禁断の果実を携えてどこまで行こう?
行き先は非現実的な快楽の海
快楽の海に呑まれて溺れて
最後はひとりで死んでいく──
相澤直輝は新宿のクラブ〈エスケープ〉二階のVIPルームの窓から下で躍り狂う人々を傍観していた。
このVIPルームは個室のため一階のクラブ内に流れる爆音のクラブミュージックも人々の騒ぎ声も聴こえない。
彼はアタッシュケースの中の札束を数えた。ケースには今日相澤が取引したクスリの代金がぎっしり詰まっている。
今日の取引の儲けはなかなかのものだった。特にあの中東の媚薬〈禁断の果実〉は高値で売れる。
札束を数え終えて彼はアタッシュケースの鍵をかけた。しっかりと錠前をつけたケースを左手に持ち、VIPルームの扉を開けた。
もつれるような足取りの若い女を抱えた数人の男が階段を上がってくる。すれ違い様に男のひとりが相澤の名を呼んだ。
『直輝、部屋使うぞ』
『ああ、もう仕事は終わったからご自由にどうぞ。その子が今日の獲物?』
男に支えられてかろうじて立っている女は、虚ろな目で相澤を見ている。かなり泥酔しているが女の意識が朦朧としている原因は酒だけではない。
あの物欲しそうな目は中東の媚薬の効果だ。
『直輝は今日はいいのか?』
『僕は遠慮しておくよ。じゃ、楽しんでね』
彼らに含み笑いを返して相澤は階段を下った。これからあの女がどうなるのか相澤は知っている。
彼女は“禁断の果実”として欲望に狂った男達に捧げれられるのだ。
加速する大都会の闇と快楽に人々は呑み込まれる。
『そうだ。莉央をここに連れて来るのもいいね』
独り言を呟いてエスケープを出た相澤の姿はネオンに彩られる新宿の闇に消えた。
一度手にしてしまえばもう戻れない
どこまでも堕ちていく
どこまでも朽ちていく
どこまでも求めていく
どこまでも果てていく
禁断の果実を携えてどこまで行こう?
行き先は非現実的な快楽の海
快楽の海に呑まれて溺れて
最後はひとりで死んでいく──
相澤直輝は新宿のクラブ〈エスケープ〉二階のVIPルームの窓から下で躍り狂う人々を傍観していた。
このVIPルームは個室のため一階のクラブ内に流れる爆音のクラブミュージックも人々の騒ぎ声も聴こえない。
彼はアタッシュケースの中の札束を数えた。ケースには今日相澤が取引したクスリの代金がぎっしり詰まっている。
今日の取引の儲けはなかなかのものだった。特にあの中東の媚薬〈禁断の果実〉は高値で売れる。
札束を数え終えて彼はアタッシュケースの鍵をかけた。しっかりと錠前をつけたケースを左手に持ち、VIPルームの扉を開けた。
もつれるような足取りの若い女を抱えた数人の男が階段を上がってくる。すれ違い様に男のひとりが相澤の名を呼んだ。
『直輝、部屋使うぞ』
『ああ、もう仕事は終わったからご自由にどうぞ。その子が今日の獲物?』
男に支えられてかろうじて立っている女は、虚ろな目で相澤を見ている。かなり泥酔しているが女の意識が朦朧としている原因は酒だけではない。
あの物欲しそうな目は中東の媚薬の効果だ。
『直輝は今日はいいのか?』
『僕は遠慮しておくよ。じゃ、楽しんでね』
彼らに含み笑いを返して相澤は階段を下った。これからあの女がどうなるのか相澤は知っている。
彼女は“禁断の果実”として欲望に狂った男達に捧げれられるのだ。
加速する大都会の闇と快楽に人々は呑み込まれる。
『そうだ。莉央をここに連れて来るのもいいね』
独り言を呟いてエスケープを出た相澤の姿はネオンに彩られる新宿の闇に消えた。