早河シリーズ第三幕【堕天使】
 7月27日に四人の男子高校生が拉致監禁される事件が起きた。
監禁事件の首謀者である16歳少女と16歳少年はいずれも相澤直輝の関係者であり、二人の証言によって相澤が薬物密売組織に関係した売人であると断定された。
(※【白昼夢スピンオフ】収録作【story3.Summer vacation 2002】参照)


 男子高校生拉致監禁事件にも関与していた相澤直輝は7月27日夜から行方をくらませていたが、7月29日に相澤家が所有する長野県軽井沢町の別荘で死体となって発見された。

別荘には相澤の知人男女数名も28日夜から滞在していた模様。相澤を含む全員が、違法薬物の過剰摂取による急性薬物中毒で死亡していた。

 相澤直輝の死は過度な薬物摂取による中毒死か、相澤のさらに上にいる密売組織が不要になった相澤を始末した殺人事件なのか。

春先から頻発する薬物に関連する事件、事故、薬物の売人の連続殺人と相澤の死は関わりがあるのか。

 不審な点としては相澤の携帯電話が軽井沢の別荘や相澤の自宅のどこからも発見されなかったことだ。相澤に薬を流していた何者かが、証拠隠滅を図る目的で携帯電話を持ち去った可能性もある。

麻布にある相澤の独り暮らし先のマンションも荒らされた形跡があり、彼が所有するコンピューターはデータが初期化されていた。

 軽井沢の別荘での薬物乱用パーティーに参加しなかった相澤の知人の証言で、相澤はエスケープのVIPルームを集団強姦の場として仲間と利用していたことがわかった。

VIPルームには無数の小型カメラが仕掛けてあり、例の中東の媚薬〈禁断の果実〉を使用した集団強姦の様子をカメラで記録したビデオテープが相澤の自宅に保管されていると知人は語った。
しかし相澤の自宅からは強姦の様子が映るビデオテープは一本も発見されなかった。

 相澤を殺害した何者かは相澤の自宅にある違法薬物に関わるものを一切合切始末したようだ。

 殺人の線を強めて捜査に臨もうとしていた刑事達の前に突如として相澤直輝に関する捜査、及び一連の薬物売人連続殺人事件の捜査終了の通達が下されたのは7月31日の午後だった。


Act2.END
→Act3.罪人の烙印 に続く
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