早河シリーズ第三幕【堕天使】
薬を所持していると疑われた後輩の無実を証明するために動いていた龍牙は、相澤直輝の存在を突き止め、相澤の背後にいる存在について探りを入れていた。
だが相澤の背後にいる存在の情報はないに等しく、裏社会の人間ですらその話題には口をつぐむ。
『相澤の裏にいる人間が相澤を始末したことは間違いないのに、そいつが誰かもわからない。手出しもできない。警察なんて結局はそんなものだ』
ポジティブな香道にはらしくない溜息をついている。相澤に辿り着いた矢先の捜査本部解散がよほど堪えたようだ。
『相澤直輝の婚約者だった樋口コーポレーションのお嬢様については?』
龍牙が聞くと香道は力無く笑った。
『そっちもダメ。樋口コーポレーションの本社まで行ったけど門前払いだ。やっと話が聞けても樋口コーポレーションの会長は相澤グループとの婚約の話もなければうちには娘もいない、相澤直輝とは関係ないの一点張り』
『樋口コーポレーションとしては、とばっちり受けて厄介事に巻き込まれたくねぇのはわかるけどな』
龍牙も浮かない顔だ。その様子から聞かないまでも彼の心境を察してしまうのは20年近くの友人関係の賜物かもしれない。
『リュウの方もダメだったか』
『ああ。片山先生はその子に迷惑がかかるからと頑なに相澤の婚約者の素性を教えてくれなかった。俺が知ってるのは、樋口コーポレーションにいるはずの相澤の婚約者の名前がリオってこと。そこ止まりだ』
龍牙の勤め先の片山法律事務所の所長の片山良幸は樋口コーポレーションの先代会長と旧知の仲らしく、先代会長と愛人の間に産まれた娘とも会っている。先代会長の娘が相澤の婚約者だ。
『片山先生が相澤の婚約者の素性を話してくれればそこから相澤の裏を探っていけると思ったけど考えが甘かったかな』
『先生はリオって子を守りたいんだ。たぶん死んだ先代会長の代わりに先生はずっとその子を見守っていたんだろうな』
やがて訪れた沈黙の最中に香道は考えた。
(リオねぇ。俺がその名前で浮かぶのはなぎさの友達の莉央ちゃんくらいだけど……まさかなぁ。いくらなんでも妹の友達なんて偶然が過ぎる)
だが相澤の背後にいる存在の情報はないに等しく、裏社会の人間ですらその話題には口をつぐむ。
『相澤の裏にいる人間が相澤を始末したことは間違いないのに、そいつが誰かもわからない。手出しもできない。警察なんて結局はそんなものだ』
ポジティブな香道にはらしくない溜息をついている。相澤に辿り着いた矢先の捜査本部解散がよほど堪えたようだ。
『相澤直輝の婚約者だった樋口コーポレーションのお嬢様については?』
龍牙が聞くと香道は力無く笑った。
『そっちもダメ。樋口コーポレーションの本社まで行ったけど門前払いだ。やっと話が聞けても樋口コーポレーションの会長は相澤グループとの婚約の話もなければうちには娘もいない、相澤直輝とは関係ないの一点張り』
『樋口コーポレーションとしては、とばっちり受けて厄介事に巻き込まれたくねぇのはわかるけどな』
龍牙も浮かない顔だ。その様子から聞かないまでも彼の心境を察してしまうのは20年近くの友人関係の賜物かもしれない。
『リュウの方もダメだったか』
『ああ。片山先生はその子に迷惑がかかるからと頑なに相澤の婚約者の素性を教えてくれなかった。俺が知ってるのは、樋口コーポレーションにいるはずの相澤の婚約者の名前がリオってこと。そこ止まりだ』
龍牙の勤め先の片山法律事務所の所長の片山良幸は樋口コーポレーションの先代会長と旧知の仲らしく、先代会長と愛人の間に産まれた娘とも会っている。先代会長の娘が相澤の婚約者だ。
『片山先生が相澤の婚約者の素性を話してくれればそこから相澤の裏を探っていけると思ったけど考えが甘かったかな』
『先生はリオって子を守りたいんだ。たぶん死んだ先代会長の代わりに先生はずっとその子を見守っていたんだろうな』
やがて訪れた沈黙の最中に香道は考えた。
(リオねぇ。俺がその名前で浮かぶのはなぎさの友達の莉央ちゃんくらいだけど……まさかなぁ。いくらなんでも妹の友達なんて偶然が過ぎる)