早河シリーズ第三幕【堕天使】
茹でた枝豆を食べながら早河はみき子の戻りを待つ。枝豆を自分で購入して家で茹でることはほとんどない。
出先で食べる枝豆とはどうしてこんなに美味しいのか、長年の疑問だ。
みき子がカウンターに再び戻ってくるとまた話を再開した。まだ肝心のことを聞いていない。
『産まれた子供の性別は?』
「女の子。10月産まれの子よ」
樋口祥一の隠し子は娘だった。カオスのクイーン存在説がより濃厚になってくる。
『寺沢美雪は今どこにいる? 東京? 北海道?』
「美雪ちゃんは亡くなってるの。もう10年は経っているかしらね。彼女は故郷の北海道で出産したの。でも元々身体が丈夫じゃなくて、疲労から病気になっちゃって……」
『そうか……それで母親の寺沢美雪の死後、娘はどうなった?』
「それがわからないの。美雪ちゃんのご両親は美雪ちゃんが幼い頃に亡くなっていて身寄りがないのよね。私は娘さんに電話をもらって美雪ちゃんが亡くなったことを知らされたわ」
店内に流れる音楽が女性ヴォーカルのメロウな曲調になる。ステージで踊る女の腰が妖しくうねり、客達を楽しませた。
人に聞かれたくない話をする時は逆手をとって賑やかな場所でする方がいい。特にこういったキャバレーはその手の話の場に向いていた。
『娘はその時何歳だった?』
「中学生だったかな。あの年頃にしては大人びてしっかりした口調のお嬢さんだったのよ」
早河は考えた。寺沢美雪が病死したのは約10年前。その当時に中学生だった娘は今は成人して23歳~25歳程度になっている。
ちょうど、なぎさと同年代だ。
「美雪ちゃんが亡くなる少し前に美雪ちゃんから手紙が送られてきたの。娘さんの写真も一緒に入っていてね、美雪ちゃんにそっくりの綺麗な子。あれを美少女って言うのかしらね」
『その写真まだ持ってるなら見せて欲しい』
「探せばあると思うけど……ねぇジンちゃん。依頼で調査しているのはわかるわよ。でも一体どうして今さら美雪ちゃん達のことを調べているの?」
『それはこの業界では聞きっこなしだろ?』
訝しく探りの目を入れるみき子とやんわりと受け流す早河。どちらも人を欺くことに関しては手練れだ。
出先で食べる枝豆とはどうしてこんなに美味しいのか、長年の疑問だ。
みき子がカウンターに再び戻ってくるとまた話を再開した。まだ肝心のことを聞いていない。
『産まれた子供の性別は?』
「女の子。10月産まれの子よ」
樋口祥一の隠し子は娘だった。カオスのクイーン存在説がより濃厚になってくる。
『寺沢美雪は今どこにいる? 東京? 北海道?』
「美雪ちゃんは亡くなってるの。もう10年は経っているかしらね。彼女は故郷の北海道で出産したの。でも元々身体が丈夫じゃなくて、疲労から病気になっちゃって……」
『そうか……それで母親の寺沢美雪の死後、娘はどうなった?』
「それがわからないの。美雪ちゃんのご両親は美雪ちゃんが幼い頃に亡くなっていて身寄りがないのよね。私は娘さんに電話をもらって美雪ちゃんが亡くなったことを知らされたわ」
店内に流れる音楽が女性ヴォーカルのメロウな曲調になる。ステージで踊る女の腰が妖しくうねり、客達を楽しませた。
人に聞かれたくない話をする時は逆手をとって賑やかな場所でする方がいい。特にこういったキャバレーはその手の話の場に向いていた。
『娘はその時何歳だった?』
「中学生だったかな。あの年頃にしては大人びてしっかりした口調のお嬢さんだったのよ」
早河は考えた。寺沢美雪が病死したのは約10年前。その当時に中学生だった娘は今は成人して23歳~25歳程度になっている。
ちょうど、なぎさと同年代だ。
「美雪ちゃんが亡くなる少し前に美雪ちゃんから手紙が送られてきたの。娘さんの写真も一緒に入っていてね、美雪ちゃんにそっくりの綺麗な子。あれを美少女って言うのかしらね」
『その写真まだ持ってるなら見せて欲しい』
「探せばあると思うけど……ねぇジンちゃん。依頼で調査しているのはわかるわよ。でも一体どうして今さら美雪ちゃん達のことを調べているの?」
『それはこの業界では聞きっこなしだろ?』
訝しく探りの目を入れるみき子とやんわりと受け流す早河。どちらも人を欺くことに関しては手練れだ。