早河シリーズ第三幕【堕天使】
【3.Eden】
貴嶋に手を引かれて彼の寝室、マスターベッドルームに入った。莉央がこの部屋を訪れた回数は少ない。
食事の準備が整って貴嶋を呼びに行く時もいつも扉の前でのやりとりだった。各部屋の掃除はスコーピオンが行っていて、これまで莉央が貴嶋の部屋の中に入る必要性はなかった。
貴嶋の寝室は莉央やスコーピオンの寝室よりも大きな部屋だ。莉央やスコーピオンの部屋が長方形なのに対し、この部屋はほぼ正方形。
大きな窓が二つあった。そこから日が差し込んで室内は明るい。
キングサイズのベッドとデスク、一人掛けのソファーがある他は背の高い書棚があった。東京の貴嶋の屋敷の彼の部屋にも書棚があり、沢山の本が並べられていた。
貴嶋は莉央をソファーに座らせ、自分は窓辺に立った。スラックスのポケットに両手を入れて窓枠にもたれる。
『俊哉お兄さんのこと、まだ好き?』
不意討ちで心の準備もできていなかった莉央はわかりやすく動揺した。いつかは貴嶋に俊哉のことを聞かれるのではと予期はしていても、いざ聞かれると答えに窮する。
莉央の反応で答えは明らかだった。貴嶋は柔らかく微笑する。
『君が真の意味で私に心を開いて私を見てくれるまで、私は待っているんだ。必要以上に莉央に触れないのはそれが理由だよ。わかってもらえるかな?』
「ごめんなさい」
『謝らなくていい。焦らなくても時間は幾らでもある。君とは永遠に一緒に居たいと願っているんだ。もちろん、君が私の元を去りたいと望むのならそれも仕方ないと諦めるがね、今のところ君は私の側にいてくれる。莉央の心が私に向くまで、口説き続けるつもりでいるよ』
貴嶋は莉央に背を向ける。広く大きな背中が遠くに行ってしまうようで、莉央は急に不安になった。
貴嶋に手を引かれて彼の寝室、マスターベッドルームに入った。莉央がこの部屋を訪れた回数は少ない。
食事の準備が整って貴嶋を呼びに行く時もいつも扉の前でのやりとりだった。各部屋の掃除はスコーピオンが行っていて、これまで莉央が貴嶋の部屋の中に入る必要性はなかった。
貴嶋の寝室は莉央やスコーピオンの寝室よりも大きな部屋だ。莉央やスコーピオンの部屋が長方形なのに対し、この部屋はほぼ正方形。
大きな窓が二つあった。そこから日が差し込んで室内は明るい。
キングサイズのベッドとデスク、一人掛けのソファーがある他は背の高い書棚があった。東京の貴嶋の屋敷の彼の部屋にも書棚があり、沢山の本が並べられていた。
貴嶋は莉央をソファーに座らせ、自分は窓辺に立った。スラックスのポケットに両手を入れて窓枠にもたれる。
『俊哉お兄さんのこと、まだ好き?』
不意討ちで心の準備もできていなかった莉央はわかりやすく動揺した。いつかは貴嶋に俊哉のことを聞かれるのではと予期はしていても、いざ聞かれると答えに窮する。
莉央の反応で答えは明らかだった。貴嶋は柔らかく微笑する。
『君が真の意味で私に心を開いて私を見てくれるまで、私は待っているんだ。必要以上に莉央に触れないのはそれが理由だよ。わかってもらえるかな?』
「ごめんなさい」
『謝らなくていい。焦らなくても時間は幾らでもある。君とは永遠に一緒に居たいと願っているんだ。もちろん、君が私の元を去りたいと望むのならそれも仕方ないと諦めるがね、今のところ君は私の側にいてくれる。莉央の心が私に向くまで、口説き続けるつもりでいるよ』
貴嶋は莉央に背を向ける。広く大きな背中が遠くに行ってしまうようで、莉央は急に不安になった。