早河シリーズ第三幕【堕天使】
ソファーを離れた莉央は窓辺にいる貴嶋の背中に抱き着いた。貴嶋は驚くでもなく、腰に回された莉央の手を握る。
『莉央は甘えん坊さんだねぇ。君が私にこうして甘えてくれるのは、私を少しは必要としてくれると思っていいかい?』
「……キングのおかげで私は生きていられるんです。貴方がいなかったらきっとあのまま死んでいた」
彼の背中の体温にホッとする。彫刻のような顔立ちの貴嶋にも触れると人間の温かさがある。
貴嶋の立場や彼が統べる組織、カオスのことをまだ莉央は完全には理解しきれていない。自分は人殺しだと語る彼がどれだけの人間の命を奪ってきたのか莉央は知らない。
莉央がこれからやろうとしていることも人殺しだ。父を殺した樋口家の人間への復讐。その目的を忘れてはいない。
人の道理を外れた行いだとしても、必ずやり遂げなければならないことだった。
「キングの側にいて、一緒に過ごして、いつの間にか貴方の隣にいることが当たり前になっていました。貴方がいないと寂しくて、帰ってくるのを心待ちにして……」
『昨日も遅くまで待っていてくれたよね。出迎え嬉しかったよ』
「だから……」
振り向いた貴嶋は莉央に顔を近付ける。彼は莉央の額と自分の額を接触させて、彼女を抱き締めた。
『だから……の、続きは?』
小声で囁かれて、頬を赤くする莉央は瞳を潤ませる。彼女はとても可愛らしい。貴嶋は己の我慢もそろそろ限界だと悟った。
「キングの側にいられて幸せなんです」
『……参ったな。こんな予定ではなかったんだが』
貴嶋は莉央の頬に片手を添え、親指と人差し指で彼女の薄紅色の唇をなぞる。小さく柔らかな唇が薄く開いていた。
貴嶋の人差し指が莉央の唇の間に吸い込まれる。少し苦しげに眉間を寄せた莉央は口内に侵入した貴嶋の骨張った人差し指に舌を絡めた。
ペロペロと莉央の舌が彼の指を舐める。その様を眺める貴嶋は片目を細めた。彼の唇からも吐息が漏れる。
莉央の口から抜かれた人差し指は彼女の唾液で濡れていて、唾液のついた指を莉央の唇に押し当てた。
『もう我慢しないよ?』
「……はい」
唾液で濡れた莉央の唇に貴嶋の唇が重なる。一気に差し込まれた貴嶋の舌が莉央の舌と絡まった。日の差す明るい室内にいやらしくリップ音が響く。
『莉央は甘えん坊さんだねぇ。君が私にこうして甘えてくれるのは、私を少しは必要としてくれると思っていいかい?』
「……キングのおかげで私は生きていられるんです。貴方がいなかったらきっとあのまま死んでいた」
彼の背中の体温にホッとする。彫刻のような顔立ちの貴嶋にも触れると人間の温かさがある。
貴嶋の立場や彼が統べる組織、カオスのことをまだ莉央は完全には理解しきれていない。自分は人殺しだと語る彼がどれだけの人間の命を奪ってきたのか莉央は知らない。
莉央がこれからやろうとしていることも人殺しだ。父を殺した樋口家の人間への復讐。その目的を忘れてはいない。
人の道理を外れた行いだとしても、必ずやり遂げなければならないことだった。
「キングの側にいて、一緒に過ごして、いつの間にか貴方の隣にいることが当たり前になっていました。貴方がいないと寂しくて、帰ってくるのを心待ちにして……」
『昨日も遅くまで待っていてくれたよね。出迎え嬉しかったよ』
「だから……」
振り向いた貴嶋は莉央に顔を近付ける。彼は莉央の額と自分の額を接触させて、彼女を抱き締めた。
『だから……の、続きは?』
小声で囁かれて、頬を赤くする莉央は瞳を潤ませる。彼女はとても可愛らしい。貴嶋は己の我慢もそろそろ限界だと悟った。
「キングの側にいられて幸せなんです」
『……参ったな。こんな予定ではなかったんだが』
貴嶋は莉央の頬に片手を添え、親指と人差し指で彼女の薄紅色の唇をなぞる。小さく柔らかな唇が薄く開いていた。
貴嶋の人差し指が莉央の唇の間に吸い込まれる。少し苦しげに眉間を寄せた莉央は口内に侵入した貴嶋の骨張った人差し指に舌を絡めた。
ペロペロと莉央の舌が彼の指を舐める。その様を眺める貴嶋は片目を細めた。彼の唇からも吐息が漏れる。
莉央の口から抜かれた人差し指は彼女の唾液で濡れていて、唾液のついた指を莉央の唇に押し当てた。
『もう我慢しないよ?』
「……はい」
唾液で濡れた莉央の唇に貴嶋の唇が重なる。一気に差し込まれた貴嶋の舌が莉央の舌と絡まった。日の差す明るい室内にいやらしくリップ音が響く。