早河シリーズ第三幕【堕天使】
『バーカ。ロボットが飯食うのか?お前、いつの間にファンタジーやSFの世界の住人になったんだ?』

 兄の香道秋彦に寺沢莉央ロボット説を話すと笑われてしまった。

「バカって言った方がバカなんだよ! 私だって寺沢さんがロボットじゃないことくらいわかってるもん。ただロボットかお人形みたいだなって……」
『はいはい。でもな、なぎさ。皆がお前みたいにすぐ人と打ち解けて仲良くできるわけじゃねぇぞ』

秋彦は膨れっ面の妹の頭をポンポンと撫でた。

『人と話すことが苦手な子や心に傷を抱えて対人恐怖症になる子だっている。りおちゃんは人見知りするタイプなのかもな』
「人見知りかぁ。私はそういうの、あんまりないからよくわかんない」
『そりゃあ、なぎさは人類みんなワタシのお友達! って考えてるおめでたい奴だからな。お菓子あげるからオジサンと遊ぼって言われて、危ないオッサンについていきそうになる小学生だったから、兄ちゃんは苦労したぞ』

 小学生の時の恥ずかしい話を持ち出されて、なぎさはさらに頬を膨らませた。

 当時すでに高校生だった兄が側にいなければ、お菓子につられて知らない男に連れて行かれそうになった経験が何度かある。

……確かに、軽率で考えなしな小学生であったことは否定できない。しかし今はそんな昔話をしている場合ではい。

「どうしたらいいのかなぁ」
『悩むなんてらしくねぇな。自称友達作りの名人だろ? いつも通りやってみろよ』
「いつも通りって……」
『いつもどうやって友達作ってた?』
「そんなのわかんない。何も考えてないから」
『ほら、それだよ』

秋彦が人差し指をピンと上に向けて含み笑いをする。

「それって何?」
『何も考えずに思うがままに突っ走る。それが香道なぎさだろ?』
「あっ……」

 なぎさは己の最大の短所にして最大の長所を指摘されて目を見開いた。友達を作る時は何も考えずに直感で動いていた。

寺沢莉央にも直感の向くままぶつかればいい。
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