早河シリーズ第三幕【堕天使】
プロローグ
薄暗い部屋に男がいる。彼は両手足を縛られた姿勢で椅子に座り、呼吸を荒くして喘いでいた。
カタ……ギィィ……目の前の鉄の扉が開いて光が差し込んだ。しかし差し込んだ光は一瞬。救いの灯りのように思えた光源は黒い影に遮られた。
全身黒づくめの服を着た女がヒールの音を響かせ歩いてくる。
「私が誰か……わかる?」
女は口紅で艶やかに彩られた唇を品よく動かした。男は驚きなのか、恐怖なのか、目を見開き怯えていた。
「覚えてるみたいね」
男の様子に満足げに微笑んだ彼女は彼の頭部に銃口を押し当てた。
「安心して。まだ殺さないから。7年振りの再会なんだもの。じっくりお話しましょう。まずはそうね……9年前の事から話してもらいましょうか」
陸に打ち上げられた魚のように男は口をパクパクとさせている。なんて哀れな姿だろう。
「9年前、あなた達が樋口祥一を“殺した”……そうよね?」
プロローグ END
→第一章 楽園追放 に続く
カタ……ギィィ……目の前の鉄の扉が開いて光が差し込んだ。しかし差し込んだ光は一瞬。救いの灯りのように思えた光源は黒い影に遮られた。
全身黒づくめの服を着た女がヒールの音を響かせ歩いてくる。
「私が誰か……わかる?」
女は口紅で艶やかに彩られた唇を品よく動かした。男は驚きなのか、恐怖なのか、目を見開き怯えていた。
「覚えてるみたいね」
男の様子に満足げに微笑んだ彼女は彼の頭部に銃口を押し当てた。
「安心して。まだ殺さないから。7年振りの再会なんだもの。じっくりお話しましょう。まずはそうね……9年前の事から話してもらいましょうか」
陸に打ち上げられた魚のように男は口をパクパクとさせている。なんて哀れな姿だろう。
「9年前、あなた達が樋口祥一を“殺した”……そうよね?」
プロローグ END
→第一章 楽園追放 に続く