早河シリーズ第三幕【堕天使】
「……ハァ」
『なに落ち込んでんだファザコン』
玄関でついた溜息の瞬間を廊下に立つ俊哉に見られていた。俊哉は壁にもたれてこちらの様子を窺っている。
「だって……久しぶりに出掛けられると思ったのに……」
しょんぼりと落ち込む莉央の頭上に俊哉の大きな手のひらが乗った。
『親父の代わりに俺が遊びに連れて行ってやろうか?』
「いいの?」
『どうせ今日は暇してたし。ファザコンな莉央に付き合ってやれるのはこの俺くらいしかいないからな』
雅子と宏伸の莉央への態度は変わらず素っ気なく冷たいが莉央を愛してくれる父の祥一となんだかんだ言いながらも優しく接して面倒を見てくれる俊哉がいる。
母を亡くした当時は絶望と寂しさにうちひしがれていた莉央も今は少なからずささやかな幸せを感じていた。
外出用に選んだ服は小花柄のシャツワンピース。この前、なぎさ達と出掛けた渋谷109で購入した服だ。このワンピースを試着した莉央を見てなぎさ達は満場一致で似合うと言ってくれた。
玄関で俊哉が待っていた。寝癖を整え、ラフな服に身を包む彼はまじまじと莉央の全身を見て眉を寄せる。
『スカートの丈が短い』
「そうかな?」
『俺はいいけど親父の前ではそれは着ない方がいいぞ。あの人、莉央のことになるとめっちゃくちゃ過保護だからそんな短いスカート履いてたら発狂する』
妹の服装に口を出す俊哉もだいぶ過保護だと思うとは莉央は口には出さなかった。お気に入りのワンピースなのに父の前では着てはダメだと言われると残念な気持ちになった。
俊哉の車にはこれまでも何度か乗っている。今日は車内にかすかに香水のような香りがした。その香りにまた胸がざわつく。
(昨日の女の人の香水?)
今は莉央が座る助手席に昨日はカフェで見たあの女性が座っていたと思うと胸の奥がチクリと痛んだ。この痛みの意味が莉央にはわからなかった。
『なに落ち込んでんだファザコン』
玄関でついた溜息の瞬間を廊下に立つ俊哉に見られていた。俊哉は壁にもたれてこちらの様子を窺っている。
「だって……久しぶりに出掛けられると思ったのに……」
しょんぼりと落ち込む莉央の頭上に俊哉の大きな手のひらが乗った。
『親父の代わりに俺が遊びに連れて行ってやろうか?』
「いいの?」
『どうせ今日は暇してたし。ファザコンな莉央に付き合ってやれるのはこの俺くらいしかいないからな』
雅子と宏伸の莉央への態度は変わらず素っ気なく冷たいが莉央を愛してくれる父の祥一となんだかんだ言いながらも優しく接して面倒を見てくれる俊哉がいる。
母を亡くした当時は絶望と寂しさにうちひしがれていた莉央も今は少なからずささやかな幸せを感じていた。
外出用に選んだ服は小花柄のシャツワンピース。この前、なぎさ達と出掛けた渋谷109で購入した服だ。このワンピースを試着した莉央を見てなぎさ達は満場一致で似合うと言ってくれた。
玄関で俊哉が待っていた。寝癖を整え、ラフな服に身を包む彼はまじまじと莉央の全身を見て眉を寄せる。
『スカートの丈が短い』
「そうかな?」
『俺はいいけど親父の前ではそれは着ない方がいいぞ。あの人、莉央のことになるとめっちゃくちゃ過保護だからそんな短いスカート履いてたら発狂する』
妹の服装に口を出す俊哉もだいぶ過保護だと思うとは莉央は口には出さなかった。お気に入りのワンピースなのに父の前では着てはダメだと言われると残念な気持ちになった。
俊哉の車にはこれまでも何度か乗っている。今日は車内にかすかに香水のような香りがした。その香りにまた胸がざわつく。
(昨日の女の人の香水?)
今は莉央が座る助手席に昨日はカフェで見たあの女性が座っていたと思うと胸の奥がチクリと痛んだ。この痛みの意味が莉央にはわからなかった。