早河シリーズ第三幕【堕天使】
祥一の葬儀が終わり、小さな遺骨となって彼は樋口家に戻ってきた。莉央は葬儀の時に着用していた聖蘭学園の制服のまま、床の間に置かれた祥一の遺骨の前に座っていた。
遺影の中の父は精悍な顔をしている。母を亡くし、頼りにしていた父まで亡くした。
(これからどうすればいいの? お父様……私の居場所はお父様のいる所なんだよ?お父様がいなれば私の居場所はどこにもない)
泣きすぎて涙も枯れている。何もする気力がおきない。
『まだここにいたのか。着替えもしないで』
床の間の入り口から宏伸が顔を出した。宏伸はすでに喪服を脱いで普段着に着替えている。
莉央は遺骨の前から離れた。床の間を出ていこうとする莉央を宏伸が引き留める。
『莉央、話がある。座りなさい』
床の間の畳の上にあぐらをかく宏伸は自分の隣を指差した。今は誰とも話をしたい気分ではないが、年長者の言うことには従うのがこの家のルール。
莉央は渋々、宏伸の隣に正座した。
『これからどうするんだ? 親父がいない今、お前がこの家に留まる理由はなくなった』
無言でうつむく莉央はスカートの裾をきゅっ握る。祥一がいない樋口家は雅子の天下だ。
自分を疎ましく思う雅子が樋口家から自分を追い出そうとすることは予想がつく。
『お前はまだ16だ。ひとりで生きていくにも無理がある。この家を出て行きたいなら好きにすればいいが、高校には通えなくなるだろう。今の学校、卒業まで通いたいか?』
「……はい」
頭に浮かぶのは高校で初めてできた友人のなぎさの顔。樋口家を出て学校に通えなくなればなぎさにも他の友人達にも会えなくなる。
『わかった。高校卒業まではこの家に居られるように俺から母さんに話をしておく』
「ありがとうございます」
莉央は宏伸に頭を下げた。
『ただし、それには条件がある』
ニヤリと笑った宏伸は正座をする莉央の脚に手を伸ばした。スカートをめくり、彼女の白く滑らかな太ももを宏伸の肉付きのいい指がいやらしく撫でる。莉央の身体に悪寒が走った。
『最近女っぽくなったよなぁ。男を誘うやらしい匂いがついてきた』
「止めてください……」
莉央は必死でスカートを押さえて宏伸の手を避けようとする。宏伸は下劣な顔をして今度は莉央の膨らんだ胸元を服の上から鷲掴みにした。
『誰のおかげでここまで身体が大きくなれたと思う? ここに来てからお前が食べ物に不自由したことがあるか? 俺が稼いだ金で良い物を食べているからこんなに身体が成熟したんだろ。ほら、服を脱いでもっとよく見せなさい』
「……嫌っ……」
制服のシャツのボタンを無理やり外そうとする宏伸の手を撥《は》ねのける。宏伸に強く引っ張られたシャツのボタンがとれて畳の上を転がった。
『いいのか? 俺に逆らえばお前は一文無しで放り出されて野垂れ死にだ。お前が生きていくためには俺の言うことを聞くしかない』
「そんなの酷い!」
『口答えするな!』
宏伸が莉央の頬を叩いた。頬を叩かれた莉央は畳に突っ伏す。理不尽な要求と頬の痛みで涙が滲んだ。
遺影の中の父は精悍な顔をしている。母を亡くし、頼りにしていた父まで亡くした。
(これからどうすればいいの? お父様……私の居場所はお父様のいる所なんだよ?お父様がいなれば私の居場所はどこにもない)
泣きすぎて涙も枯れている。何もする気力がおきない。
『まだここにいたのか。着替えもしないで』
床の間の入り口から宏伸が顔を出した。宏伸はすでに喪服を脱いで普段着に着替えている。
莉央は遺骨の前から離れた。床の間を出ていこうとする莉央を宏伸が引き留める。
『莉央、話がある。座りなさい』
床の間の畳の上にあぐらをかく宏伸は自分の隣を指差した。今は誰とも話をしたい気分ではないが、年長者の言うことには従うのがこの家のルール。
莉央は渋々、宏伸の隣に正座した。
『これからどうするんだ? 親父がいない今、お前がこの家に留まる理由はなくなった』
無言でうつむく莉央はスカートの裾をきゅっ握る。祥一がいない樋口家は雅子の天下だ。
自分を疎ましく思う雅子が樋口家から自分を追い出そうとすることは予想がつく。
『お前はまだ16だ。ひとりで生きていくにも無理がある。この家を出て行きたいなら好きにすればいいが、高校には通えなくなるだろう。今の学校、卒業まで通いたいか?』
「……はい」
頭に浮かぶのは高校で初めてできた友人のなぎさの顔。樋口家を出て学校に通えなくなればなぎさにも他の友人達にも会えなくなる。
『わかった。高校卒業まではこの家に居られるように俺から母さんに話をしておく』
「ありがとうございます」
莉央は宏伸に頭を下げた。
『ただし、それには条件がある』
ニヤリと笑った宏伸は正座をする莉央の脚に手を伸ばした。スカートをめくり、彼女の白く滑らかな太ももを宏伸の肉付きのいい指がいやらしく撫でる。莉央の身体に悪寒が走った。
『最近女っぽくなったよなぁ。男を誘うやらしい匂いがついてきた』
「止めてください……」
莉央は必死でスカートを押さえて宏伸の手を避けようとする。宏伸は下劣な顔をして今度は莉央の膨らんだ胸元を服の上から鷲掴みにした。
『誰のおかげでここまで身体が大きくなれたと思う? ここに来てからお前が食べ物に不自由したことがあるか? 俺が稼いだ金で良い物を食べているからこんなに身体が成熟したんだろ。ほら、服を脱いでもっとよく見せなさい』
「……嫌っ……」
制服のシャツのボタンを無理やり外そうとする宏伸の手を撥《は》ねのける。宏伸に強く引っ張られたシャツのボタンがとれて畳の上を転がった。
『いいのか? 俺に逆らえばお前は一文無しで放り出されて野垂れ死にだ。お前が生きていくためには俺の言うことを聞くしかない』
「そんなの酷い!」
『口答えするな!』
宏伸が莉央の頬を叩いた。頬を叩かれた莉央は畳に突っ伏す。理不尽な要求と頬の痛みで涙が滲んだ。