早河シリーズ第三幕【堕天使】
新卒時代の不倫や不倫相手の子供を堕胎した過去をここにいる者では麻衣子以外は知らない。知れば千絵も紗菜も口を揃えて、あのなぎさが不倫? と驚くはずだ。
友達であっても知られたくない領域がある。むしろ、友達だから知られたくない。
それは見栄やプライドかもしれない。でも誰かの汚い面を知らないからこそ、友達でい続けられる部分もある。
上司の早河にはすべて知られていても平気なのに、友達には知られたくない。
(不倫も子供堕ろしたことも自殺未遂も全部知られちゃってるから、所長には今さら隠すことってないからなぁ……。私が“香道秋彦の妹”じゃなければ、所長だって私を軽蔑していたかもしれないもの)
司会者がスライドショーの始まりを告げると照明が落ちて会場が薄暗くなる。招待客の視線が一斉にプロジェクターに集まり、新郎新婦の歴史の写真が流れた。
新婦、優香の高校時代の写真が映るとなぎさ達のテーブルがざわついた。
「高校の時のだ!」
「なつかしーい」
「うわぁ……みんな若い」
懐かしい高校の同級生達の顔が遠い日々の青春時代と共に甦る。
なぎさ、麻衣子、千絵、紗菜、新婦の優香。高校時代の仲良しグループには本当はもうひとり友人がいたことを、なぎさ以外の友人達も思い出しているだろう。
本当は“六人”だったことを。
高校2年生の修学旅行は大阪に行った。大阪の街を背景にして六人で写る写真には確かにいたはずの彼女のこと。
高校3年の11月の学園祭の時にはもう居なくなっていた彼女のこと。きっと優香も含めた五人は皆、同じ顔を頭に思い浮かべている。
「莉央……」
なぎさは誰にも気付かれないように小さな声でその名前を呟いた。
友達であっても知られたくない領域がある。むしろ、友達だから知られたくない。
それは見栄やプライドかもしれない。でも誰かの汚い面を知らないからこそ、友達でい続けられる部分もある。
上司の早河にはすべて知られていても平気なのに、友達には知られたくない。
(不倫も子供堕ろしたことも自殺未遂も全部知られちゃってるから、所長には今さら隠すことってないからなぁ……。私が“香道秋彦の妹”じゃなければ、所長だって私を軽蔑していたかもしれないもの)
司会者がスライドショーの始まりを告げると照明が落ちて会場が薄暗くなる。招待客の視線が一斉にプロジェクターに集まり、新郎新婦の歴史の写真が流れた。
新婦、優香の高校時代の写真が映るとなぎさ達のテーブルがざわついた。
「高校の時のだ!」
「なつかしーい」
「うわぁ……みんな若い」
懐かしい高校の同級生達の顔が遠い日々の青春時代と共に甦る。
なぎさ、麻衣子、千絵、紗菜、新婦の優香。高校時代の仲良しグループには本当はもうひとり友人がいたことを、なぎさ以外の友人達も思い出しているだろう。
本当は“六人”だったことを。
高校2年生の修学旅行は大阪に行った。大阪の街を背景にして六人で写る写真には確かにいたはずの彼女のこと。
高校3年の11月の学園祭の時にはもう居なくなっていた彼女のこと。きっと優香も含めた五人は皆、同じ顔を頭に思い浮かべている。
「莉央……」
なぎさは誰にも気付かれないように小さな声でその名前を呟いた。