早河シリーズ第三幕【堕天使】
樋口祥一の死から2週間後、明日は勤労感謝の日。時折訪れる平日の祝日に皆が浮かれている。
「そういえば莉央、イルカのストラップとっちゃったの? 最近ついてないよね」
「取れて失くしちゃったの」
なぎさや紗菜、千絵の携帯電話にはプリクラやシールが貼ってあったり、麻衣子や優香の携帯電話にはイニシャルのストラップがついている。
でも今の莉央の白色の携帯電話はシンプルなまま。唯一の装飾が水族館で俊哉に買ってもらったあのイルカのストラップだった。
その携帯に不在着信が入っていた。ざわつく昼休みの教室を抜け出して階段の踊り場に出る。知らない番号からの不在着信の他には留守電が一件入っていた。
莉央は留守電に接続してメッセージを再生する。
{──寺沢莉央さんの携帯でしょうか? 弁護士の片山良幸と申します。お父様の樋口祥一様からあなたへ渡すよう頼まれた預かり物がございます。留守電を聞かれましたら折り返しこの番号までご連絡いただけますでしょうか。ご連絡お待ちしています}
弁護士の片山良幸、その名に心当たりはない。昼休みが終わるまであと10分だ。莉央は折り返し片山弁護士へ電話をかけた。
留守電と同じ、柔らかな声色の男性が電話口に出た。
{私のことは樋口家の方達には知られないようにしてください。どなたにも私からの連絡があったことはお話にならないように}
「わかりました」
学校が終わった後に片山弁護士と会う約束をして電話を終えた。帰りのHRの後になぎさが駆け寄ってくる。
「莉央ー。これから皆でマルキューに買い物行くんだけど莉央も行かない?」
「ごめんね。今日は予定があって……」
「そっかぁ。じゃあまた今度一緒に行こうね!」
なぎさの笑顔がどれだけ莉央の心を救っているか、なぎさ自身は知らないだろう。
「うん。またね」
莉央はなぎさや友人達に手を振って先に教室を出た。
片山弁護士との待ち合わせ場所に指定されたのは聖蘭学園から近い神宮外苑のいちょう並木。見頃を迎えた黄金色の並木道を歩いていくと、ベンチに座る紳士の姿が見えた。
「そういえば莉央、イルカのストラップとっちゃったの? 最近ついてないよね」
「取れて失くしちゃったの」
なぎさや紗菜、千絵の携帯電話にはプリクラやシールが貼ってあったり、麻衣子や優香の携帯電話にはイニシャルのストラップがついている。
でも今の莉央の白色の携帯電話はシンプルなまま。唯一の装飾が水族館で俊哉に買ってもらったあのイルカのストラップだった。
その携帯に不在着信が入っていた。ざわつく昼休みの教室を抜け出して階段の踊り場に出る。知らない番号からの不在着信の他には留守電が一件入っていた。
莉央は留守電に接続してメッセージを再生する。
{──寺沢莉央さんの携帯でしょうか? 弁護士の片山良幸と申します。お父様の樋口祥一様からあなたへ渡すよう頼まれた預かり物がございます。留守電を聞かれましたら折り返しこの番号までご連絡いただけますでしょうか。ご連絡お待ちしています}
弁護士の片山良幸、その名に心当たりはない。昼休みが終わるまであと10分だ。莉央は折り返し片山弁護士へ電話をかけた。
留守電と同じ、柔らかな声色の男性が電話口に出た。
{私のことは樋口家の方達には知られないようにしてください。どなたにも私からの連絡があったことはお話にならないように}
「わかりました」
学校が終わった後に片山弁護士と会う約束をして電話を終えた。帰りのHRの後になぎさが駆け寄ってくる。
「莉央ー。これから皆でマルキューに買い物行くんだけど莉央も行かない?」
「ごめんね。今日は予定があって……」
「そっかぁ。じゃあまた今度一緒に行こうね!」
なぎさの笑顔がどれだけ莉央の心を救っているか、なぎさ自身は知らないだろう。
「うん。またね」
莉央はなぎさや友人達に手を振って先に教室を出た。
片山弁護士との待ち合わせ場所に指定されたのは聖蘭学園から近い神宮外苑のいちょう並木。見頃を迎えた黄金色の並木道を歩いていくと、ベンチに座る紳士の姿が見えた。