早河シリーズ第三幕【堕天使】
98年7月に母の美雪が肝臓癌で死去、その後は祥一に引き取られて東京の樋口邸で暮らす。
2000年4月 私立聖蘭学園に入学
2002年8月 聖蘭学園退学、同年9月22日、成田空港から出国
イイジマユウスケも寺沢莉央と同じ便でアメリカへ渡る。
2006年2月17日 寺沢莉央帰国。以降の足取りは不明。


『また聖蘭学園か』
『“また”聖蘭学園ですよ。有紗ちゃんが通う学校でなぎさちゃんの母校』

 聖蘭学園は3ヶ月前の昨年12月に関わった女子高生、高山有紗が通っている。偶然にもなぎさの母校であったが、ここまで来るとこれらの一致は偶然なのかと疑いたくもなる。

『今考えると今回の事件が寺沢莉央の犯行なら、3ヶ月前のあの事件はこのための布石だったのかもな。カオスの活動が本格化してきたのも2006年頃。寺沢莉央の帰国時期と一致する』

 2006年8月に起きた静岡連続殺人事件から犯罪組織カオスの犯罪劇は幕を開けた。
あの時から早河は逃れられない宿命の渦に呑まれていった。

『なぎさちゃん大丈夫ですか?』
『泣いてた。当然だよな。なぎさにとっては受け入れたくないことだろう』

 昨日、海で見た小さくうずくまって泣くなぎさの姿が以前の自分と重なって見えた。

 この世は受け入れたくないことが多すぎる。それでも受け入れて人は前に進む。
泣いても嘆いても叫んでも、時間を巻き戻せない。後戻りはできない。

なぎさが現実を受け入れて前に進むその時まで、静かに見守るしかない。それが自分が彼女にできる唯一のことだと彼は思っていた。
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