早河シリーズ第三幕【堕天使】
どうして泣いているのかわからない。
何が悔しくて泣けるのかわからない。
{なぎさ。泣かないで。私ね、なぎさには感謝してるの。なぎさのおかげで毎日学校が楽しかった。学校に行けば私は笑えた。学校だけが私の居場所だったの。ありがとう。それだけ言いたかった}
莉央の声は昔と変わらず優しくて、変わらない彼女の優しさに触れてさらに涙が溢れてくる。
寺沢莉央は優しい人なのだ。殺人を犯した今でも、彼女は優しい。
「お願い、自首して」
{それはできない。カオスが私の居場所だから。キングの側にいたいの}
「そんなの……犯罪組織なんて莉央の居場所じゃないよ。貴嶋がどんな人か、わかってるの?」
{少なくとも、なぎさよりはキングのことを知ってる。これが私の選んだ生き方}
犯罪組織で生きることが莉央の生き方だとしたら、なぎさは?
覚悟を決めろと早河に言われた。今がその時だ。
でも覚悟なんてどうやって決めるの?
決めたら振り返らない、立ち止まらない。
それが覚悟なの?
何のために早河の助手になった?
何のために早河の隣にいる?
「……だったら私が莉央を捕まえる」
{なぎさにできるの?}
「バカにしないで。私は早河探偵の助手よ。私が必ず莉央を牢屋にぶちこんでやるから」
{その台詞、早河探偵がキングに言った言葉と同じね。その時が来るのを楽しみにしてる。じゃあね}
通話が切れてそれまで聞こえなかった雑踏の騒音が耳に入る。なぎさの隣に立つ小さな女の子が柵の間からピンク色に煌めく水面を見ていた。
こんな再会ならしたくなかった
こんな真実なら知りたくなかった
これが運命なの? これが現実なの?
ねぇ、君はどうしてひとりですべてを抱えてしまうの?
また、ひらひらと桜の花びらが舞う。舞った花びらを背伸びして掴んだ小さな女の子の笑顔に心が救われた。その優しい笑顔はなぎさが知る寺沢莉央に似ていた。
春の夜、桜舞い散る闇の中、君は再び現れた。漆黒に染めた翼を背負って。
何が悔しくて泣けるのかわからない。
{なぎさ。泣かないで。私ね、なぎさには感謝してるの。なぎさのおかげで毎日学校が楽しかった。学校に行けば私は笑えた。学校だけが私の居場所だったの。ありがとう。それだけ言いたかった}
莉央の声は昔と変わらず優しくて、変わらない彼女の優しさに触れてさらに涙が溢れてくる。
寺沢莉央は優しい人なのだ。殺人を犯した今でも、彼女は優しい。
「お願い、自首して」
{それはできない。カオスが私の居場所だから。キングの側にいたいの}
「そんなの……犯罪組織なんて莉央の居場所じゃないよ。貴嶋がどんな人か、わかってるの?」
{少なくとも、なぎさよりはキングのことを知ってる。これが私の選んだ生き方}
犯罪組織で生きることが莉央の生き方だとしたら、なぎさは?
覚悟を決めろと早河に言われた。今がその時だ。
でも覚悟なんてどうやって決めるの?
決めたら振り返らない、立ち止まらない。
それが覚悟なの?
何のために早河の助手になった?
何のために早河の隣にいる?
「……だったら私が莉央を捕まえる」
{なぎさにできるの?}
「バカにしないで。私は早河探偵の助手よ。私が必ず莉央を牢屋にぶちこんでやるから」
{その台詞、早河探偵がキングに言った言葉と同じね。その時が来るのを楽しみにしてる。じゃあね}
通話が切れてそれまで聞こえなかった雑踏の騒音が耳に入る。なぎさの隣に立つ小さな女の子が柵の間からピンク色に煌めく水面を見ていた。
こんな再会ならしたくなかった
こんな真実なら知りたくなかった
これが運命なの? これが現実なの?
ねぇ、君はどうしてひとりですべてを抱えてしまうの?
また、ひらひらと桜の花びらが舞う。舞った花びらを背伸びして掴んだ小さな女の子の笑顔に心が救われた。その優しい笑顔はなぎさが知る寺沢莉央に似ていた。
春の夜、桜舞い散る闇の中、君は再び現れた。漆黒に染めた翼を背負って。