早河シリーズ第三幕【堕天使】
エピローグ
4月6日(Mon)午後7時
ニンニクの匂いが充満するラーメン屋は今夜も商売繁盛で賑やかだ。
「おばちゃーん! 特盛餃子一人前追加お願い!」
小山真紀が厨房に向けてオーダーを叫んだ。真紀の前には空になった餃子の皿と湯気の上がるとんこつラーメン。
追加オーダーを頼む真紀に早河、上野、原の男三人は唖然としていた。ラーメン屋の四人席には真紀と早河、向かいに上野と原が座っている。
早河が刑事時代にはここに香道秋彦を加えたメンバーで頻繁にこのラーメン屋に集まっていた。
『お前そんなに食べてよく太らないよな。男の俺達よりも食ってるだろ』
原昌也はとんこつラーメンをすする真紀を呆れた眼差しで眺めている。彼も熱々のチャーシュー麺をすすった。
「食べた分を仕事で消費するからいいんです。……でも結局、寺沢莉央が樋口社長達の殺人の被疑者だってことも、カオスのクイーンだと裏付ける証拠もなぎさちゃんにかかってきた自白の電話だけなんですよね」
『寺沢莉央がなぎさちゃんに語ったことが事実なら彼女は永山医師以外の樋口家の三人を殺し、カオスのクイーンとして貴嶋の側にいる』
上野が頷き、この店自慢の餃子を口に運ぶ。
なぎさの元に莉央からの電話があったのは先週のこと。なぎさは早河にそのことを話し、電話の内容は早河から警察に伝わった。
新年度が始まっても警察はまだ寺沢莉央逮捕に至っていない。
原が烏龍茶のグラスを傾け、中身を一気に飲み干して溜息をつく。彼のチャーシュー麺は半分に減っていた。
『その自白の電話以降、寺沢莉央の足取りはまったく掴めませんね。一体どこに雲隠れしてるんだか』
『貴嶋の所有する屋敷が都内にあるはずだが、おそらく別人名義だろう。早河、矢野は寺沢莉央について何か掴めてないのか?』
上野が早河に話を振る。炒め物に手をつけていた早河はかぶりを振った。
『さすがの矢野でも今のところは何もないようです。とにかく寺沢莉央のことに関しては情報が少な過ぎて、なぎさ以上に彼女のことを知ってる人間がいないんです』
『なぎさちゃんに何度も尋ねるわけにもいかない。その後、なぎさちゃんは大丈夫なのか?』
『見た目は元気にやっています。俺も出来る限りのフォローはしてるつもりですけど、後はあいつと寺沢莉央の問題なので』
店内の一角に設置されたテレビでは人気のトーク番組の放送が始まった。
ニンニクの匂いが充満するラーメン屋は今夜も商売繁盛で賑やかだ。
「おばちゃーん! 特盛餃子一人前追加お願い!」
小山真紀が厨房に向けてオーダーを叫んだ。真紀の前には空になった餃子の皿と湯気の上がるとんこつラーメン。
追加オーダーを頼む真紀に早河、上野、原の男三人は唖然としていた。ラーメン屋の四人席には真紀と早河、向かいに上野と原が座っている。
早河が刑事時代にはここに香道秋彦を加えたメンバーで頻繁にこのラーメン屋に集まっていた。
『お前そんなに食べてよく太らないよな。男の俺達よりも食ってるだろ』
原昌也はとんこつラーメンをすする真紀を呆れた眼差しで眺めている。彼も熱々のチャーシュー麺をすすった。
「食べた分を仕事で消費するからいいんです。……でも結局、寺沢莉央が樋口社長達の殺人の被疑者だってことも、カオスのクイーンだと裏付ける証拠もなぎさちゃんにかかってきた自白の電話だけなんですよね」
『寺沢莉央がなぎさちゃんに語ったことが事実なら彼女は永山医師以外の樋口家の三人を殺し、カオスのクイーンとして貴嶋の側にいる』
上野が頷き、この店自慢の餃子を口に運ぶ。
なぎさの元に莉央からの電話があったのは先週のこと。なぎさは早河にそのことを話し、電話の内容は早河から警察に伝わった。
新年度が始まっても警察はまだ寺沢莉央逮捕に至っていない。
原が烏龍茶のグラスを傾け、中身を一気に飲み干して溜息をつく。彼のチャーシュー麺は半分に減っていた。
『その自白の電話以降、寺沢莉央の足取りはまったく掴めませんね。一体どこに雲隠れしてるんだか』
『貴嶋の所有する屋敷が都内にあるはずだが、おそらく別人名義だろう。早河、矢野は寺沢莉央について何か掴めてないのか?』
上野が早河に話を振る。炒め物に手をつけていた早河はかぶりを振った。
『さすがの矢野でも今のところは何もないようです。とにかく寺沢莉央のことに関しては情報が少な過ぎて、なぎさ以上に彼女のことを知ってる人間がいないんです』
『なぎさちゃんに何度も尋ねるわけにもいかない。その後、なぎさちゃんは大丈夫なのか?』
『見た目は元気にやっています。俺も出来る限りのフォローはしてるつもりですけど、後はあいつと寺沢莉央の問題なので』
店内の一角に設置されたテレビでは人気のトーク番組の放送が始まった。