早河シリーズ第三幕【堕天使】
 軽やかなBGMに引き寄せられて自然と早河達の視線はテレビに向く。

{本日のゲストは来週4月14日火曜、夜10時スタートの連続ドラマ、Midnight Edenに主演される女優の本庄玲夏さんにお越しいただきましたー!}
{よろしくお願いします}

 女性司会者の紹介を受けて女優の本庄玲夏が颯爽と登場した。
早河以外の三人はそれぞれ彼の顔を盗み見る。早河はポーカーフェイスの仮面を崩さずにテレビに映るかつての恋人を見つめた。

『本庄玲夏、相変わらず美人だな』
「このドラマ観たいと思ってたんだぁ! 本庄玲夏の刑事役楽しみ」

通路を挟んで隣の席のカップルの会話が聞こえてくる。VTRで玲夏の経歴が簡単に紹介され、ファッション誌のモデル時代の玲夏の写真も映された。

{今回主演されるドラマで本庄さんは初の刑事役ということですが、何か役作りをされましたか?}
{はい、まず本職の警察官の方から拳銃を撃つ時の構えを教わりました。あとは身体作りにジムでトレーニングをしたり、キックボクシングにも通いましたね}

 薄汚れたラーメン屋には不似合いな華やかで玲瓏《れいろう》な玲夏の声が流れる。

「はい、特盛餃子一人前ねー!」

 恰幅のいい女将が追加注文の特盛餃子の皿を真紀の前に置いた。真紀は玲夏のトークを聞きながら箸をすすめる。

テレビに映る自分の親友と隣にいる親友の元恋人。今さら気にしても仕方ないが、この状況が一番気まずいのは自分であると真紀は確信していた。

 早河はテレビから視線を逸らして少し伸びた味噌ラーメンを掻き込んだ。


早河シリーズ第三幕 堕天使 END
→本編 あとがきに続く
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