早河シリーズ第三幕【堕天使】
 キスをしながらベッドに倒れ込む莉央と俊哉。俊哉の指が莉央のパジャマのボタンをひとつずつ外す。
はだけた胸元のキャミソールの肩紐をずらすと莉央の白い肌が露《あら》わになる。

「電気……」
『ダメ。全部見せろ』

電気の灯る明るい室内で互いに一糸纏わぬ姿を晒す。今夜の俊哉は電気を消すことも許してくれない。

『今月、兄貴とどれだけシた?』
「……わからない」
『へぇ。わからないくらいにはヤってるんだな』

 中に沈む俊哉の二本の指が莉央の快楽の場所を狙い撃ちする。宏伸と俊哉によって快楽を教え込まれた莉央の身体は仰け反り、必死で抑えていた声が漏れた。

それは魔法のようで
それは麻薬のようで
一度それを味わってしまえばもう抜け出せない

 やがてふたりの身体はひとつに繋がる。手を繋ぎ、唇を触れ合わせ、ふたりで快楽の海を泳いだ。

本当はこんなことしたくない。自分は兄を満足させるためのオモチャだ。
父も母もいない莉央がこの息苦しい家で生きていくには兄達の言うことに従って兄のオモチャになるしか道はない。

 嫌い、憎い、最低。どれだけ心の中で叫んでも本心では俊哉を嫌いになれない。
嫌い、嫌い、……好き?

 初めて俊哉にキスをされたあの時の、絶望の中に感じた一瞬のときめきを莉央は覚えている。

どこかでそうなることを期待していた?
どこかで兄のものになることを期待していた?

 いけないことをしている自覚はあった。いけないこと?
そう、これはいけないことだ。

これは兄と妹の一線を越えた誰にも知られてはいけない秘め事……。
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