早河シリーズ第三幕【堕天使】
 アダムとイブが暮らしていたエデンの園は地上の楽園と呼ばれていた。園の中央には生命の樹と知恵の樹が植えられ、神は知恵の実を食べることをアダムに禁じた。

しかし蛇に騙されたイブが、禁じられていた知恵の実を食べてしまったことによって神の怒りに触れ、アダムとイブは楽園を追放される。

 禁断の果実とされる知恵の実を口にしたイブはその実をアダムにも食べさせ、二人は自分達が男と女であることを知る。

 アダムはイブに恋をしたの?
 イブはアダムに恋をしたの?

 楽園を追放された男と女の行き着く先は楽園とは程遠い地獄。罪を犯した者は裁かれる。

ではここにいる男と女を裁くのは一体誰なのだろう? 兄を愛した女を裁くのは誰なのだろう?

 淡い間接照明の灯るベッドルーム。二組敷かれた布団の片方で、二つの影が揺らめいていた。
夕暮れの露天風呂で散々互いを欲したのに、また彼らは身体を重ねる。

 指と舌で執拗に俊哉に犯された場所に彼自身が侵入してくる。露天風呂でも侵入を許したそこは、また容易く彼の侵入を許可した。

俊哉は最初は動かずにじっくり奥までそこの感触を味わい、莉央の額にキスを落とす。
今夜の莉央は浴衣やアルコールの相乗効果で一段と色っぽく、美しい。

 夕食で出された俊哉の日本酒を莉央は少しだけ飲酒した。彼女の頬は桃色に色づき、身体も熱く火照っている。
いつもよりも感覚が敏感になるのはアルコールのせい?

ゆらめく二つの影の動きは、やがて激しさを増していく。莉央が啼《な》き、俊哉が呻《うめ》いた。

 知恵の実を食べたアダムとイブもこうして身体を求め合ったりしたの?

莉央は子供の頃に読んだアダムとイブの物語を思い出しながら俊哉との永い情欲の一夜を過ごした。
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